ハッピー…バレンタイン!?

 

「なぁ。明日がなんの日か、もちのろんで知ってるよな?」

ククールがベッドに寝そべりながらそんな事を聞いていた。ヤンガスもの隣で「あ、そういえば」みたいな顔をしている。

「えーっと・・・何の日?」

「え!?お前それ本気!?もちのろんで!?」

何かさっきからもちのろんってうざいんだけど

ククールの後ろ髪をひっぱると、ククールは「イデデデデ」と叫んでいる。

 

「い、いやごめんって。それ以上やめてハゲちゃうからね俺」

「うん。で、明日が何?」

「だからさー明日はバレンタインじゃんかよ!」

ククールはさっきまでにひっぱられていた髪を整えながら、そう言った。バレンタイン・・・?

「それ、何?」

「は!?それもちのr「ん?今なんて?」

が口を挟むと、ククールはもごもごしながら言葉を終えた。たぶん今(ククールの中だけで)流行ってる言葉なんだろう。「もちのろん」が。

 

「バレンタインっていうのは、女が好きな男に何かをあげるって風習でがすよ」

「ま、それは日本だけだけどな」

「日本ってドコ?」

「あれ・・・俺今、何口走った?

ククールが意味のわからない国名を出してきたが、本人も分からないみたい。

 

「ふーん・・・で、それが僕に何の用な訳?」

「いやだからさ!がお前に何かくれるかもしれねぇだろ!?」

さっきからそれを言いたかったみたいだ。ククールはブンブンと手を真横に振っている。ヤンガスもその横でうんうんと頷いていた。えー・・・が僕に、贈り物・・・?

「あのさ、贈り物ってたとえばどんな物?」

「まぁ基本はチョコレートとかだな。お菓子が多いぜ、普通は」

「アッシ、チョコレートはゲルダにしかもらったことないでがす」

ゲルダさんも物好きだな・・・と呟いているククールにヤンガスのケツアタックが命中した。

 

お菓子・・・からお菓子・・・か。

「ごめん・・・なんかが作るお菓子っていったら、氷山みたいなアイスクリームとか石みたいなクッキーとかう○こみたいなチョコレートとかしか想像できないんだけど・・・」

「まぁそれはアッシもちょっと思ったでがす」

っていうかヒーローがうん○とか言うなよ

やいやいと宿屋の部屋で、男3人そのことについて話していた。

 

 

 

そのお隣の部屋では。

 

「ねぇ。明日が何の日か、もちのろんで知ってるわよね?」

「え?あ、うん、イエス様の誕生日だよね?」

それはクリスマスだろうが。何言ってんの、バレンタインでしょ!」

ゼシカは部屋にかかっているカレンダーを指差した。あ、そういえばそうでしたねー。

「そうだね。で?」

「あのね、で?じゃないわよ。もちのろんであげるんでしょ?に!」

いやさっきから もちのろんもちのろん うるさいんだけどォォォォ

はゼシカにシャウトした。あははーとゼシカは笑っている。何なの・・・何なの一体!

「あぁ、そういえばあげたほうがいいのかな?」

「当たり前でしょ?」

「じゃぁゼシカも一緒に作ろうよ」

「・・・誰に?」

「もちのろんでククールだよ!!」

このパーティの中ではどうやらククールにだけではなく「もちのろん」が流行っているご様子です。

 

「はぁ!?なんで私があんなケイハク男にあげなきゃなんないのよ!」

「いいじゃんいいじゃん!二人で作ったほうが楽しいでしょ♪」

そうだけど〜・・・とゴネるゼシカの腕を引っ張って、私は宿屋の主人に厨房を借りれるよう交渉をしに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃぁ小麦粉とか卵はつかってもいいからね」

「ありがとうございます!じゃぁ早く作っちゃおうよゼシカ!」

「・・・気が乗らないわ・・・」

「つべこべ言わずに!」

貸してもらったエプロンの紐を結びながら、お菓子作りに取り掛かる二人。厨房にある材料なら使ってもいいという許可が下りたので、早速冷蔵庫を見て作れるものを決める。

 

「無塩バターがあるし・・・あ、板チョコがあるよ。ココアパウダーもあるし、ココアのチョコチップクッキーにしようか?」

、お菓子作り得意なの?」

「うーん、クッキーならまだレシピはなくても作れるけど・・・」

それ以外はねーとちょっと悲しそうに笑う。ゼシカは何かを思い出したようにポン!と手を叩いた。

 

「そうだわ。クッキーなんてベタなものじゃなくって、チョコケーキとかはどう?」

「え・・・チョコケーキ?」

「うん、きっと大丈夫よ!私はよくわからないからクッキー作るけど

「ええええええ!?」

ゼシカもケーキ作れよ・・・!!とは激しく思ったけれど、これ以上言えばゼシカはなんかキレちゃいそうだからお口はミッ○ィーちゃんにしました。

 

 

 

 

・・・1時間半後・・・

 

半強制的にチョコケーキをつくることになったけれど、なんとか出来ましたやりました

「あら、すごいじゃない!匂いもおいしそうね!」

「たぶんバニラエッセンスのお陰だねー・・・」

「へーぇ。あ、ねぇねぇ。バニラエッセンスってこんなにいい匂いなんだから、きっと原液の方もかなり甘いんじゃないかしら?」

「え?・・・あっ、待ってゼシカ!バニラエッセンスはめっちゃくちゃ・・・あ・・・」

忠告する前には、ゼシカはバニラエッセンスを1滴口の中に入れてしまいました。

 

ぶほっはァァァァァァァァァ!!!!!

ゼシカァァァァ!!!だから苦いって言おうとしたのに!!

そうです、バニラエッセンスは匂いとは裏腹にとってもとっても苦いのです。(よい子も悪い子もマネしちゃダメだよ!(しねぇよ

 

 

 

 

 

 

「あーあ・・・結局ケーキ、味見の分つくるの忘れてたよ・・・」

バニラエッセンス事件があった後、買ってきた包装紙と箱でチョコケーキを包む。味見の分を作るのを忘れてしまい味が確認できないが、これ以上厨房の材料を使う訳にもいかないのでこれをあげることにした。おいしいといいんだけどな・・・喜んでくれるかな・・・。

「あー・・・緊張するけど、寝ようっ!」

はベッド元に包んだチョコケーキを置いて、すぐに眠った。

 

 

 

次の日。まだ隣でゼシカがすぅすぅと寝息を立てている頃、ククールが部屋に訪れた。今日は少し緊張で早起きしてしまったせいか、は既に今日の旅の支度をしていた。

「おい、今が姫様んところにご飯渡しに行ったぞ。も渡しにいけよ」

「え・・・ククール、私がにバレンタインのお菓子あげること知ってたの?」

「や、は忘れててもゼシカが言ってるだろうと思って」

ニヤ、と笑うククールを一発しばくと、ククールは涙目で「俺いじられ系?」と呟いていた。

 

「あはは。でもありがとククール!」

ベッド元に置いていたケーキを取って、ククールに礼を言いながら手を振って走り出した。そんな走り去っていくの背中を見守りながら、ククールはひらひらと手を振っていた。

 

「・・・えらくご満悦ね」

「うおっほぉぉうゼシカァァ!!起きてたのか?っていうか起こしちまったか?」

「目が覚めただけよ。気にしないで。・・・あと、コレ。クッキーよ」

「・・・え?」

いつの間にか隣にいた寝巻き姿のゼシカに、ククールの目の前に差し出されたのはラッピングされた何か。

「これ・・・ゼシカが作ったのか?」

「うん、昨日と一緒にね。べ、別に私から進んでやったんじゃなくて、に誘われただけだからね!?あんた今年は1個ももらえないだろうからと思って!」

ゼシカは少し恥ずかしそうに俯いて、ククールに背を向けた。

 

「・・・ごめんだけど、もう宿屋のおばちゃんにもらっちまった」

「な!?じゃ、じゃあもう返して!!いらないでしょ私のなんか!!」

ゼシカは取り返そうと、ククールの持っていたクッキーに手を伸ばす。が、ククールは手を真上に上げてゼシカに届かないようにした。

「やだ。コレは俺が食う」

「・・・え・・・でも・・・」

「だってゼシカが俺のために作ってくれたのなんて、すっげー嬉しいじゃん」

ニカッと笑ったククールの笑顔に、不覚にもときめいてしまった。私・・・本当バカ。

「く・・・腐らないうちに食べなさいよね。じゃぁ着替えるから部屋出て!」

「ん。ありがとな」

ククールは無理やりゼシカに追い出された。背後でドアの勢いをつけて閉まる音が聞こえ、ククールはだんだん嬉しくなってはにかんだ。

「あ、食べてみよ」

袋を開けてひとつクッキーを取り出し、口に含んだ。その瞬間。

「・・・しょっぺぇ・・・・・・・」

砂糖と塩を間違うという初歩的なミスを犯してしまったゼシカでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、ーー!!」

「あれ、?」

王様と姫様への朝ご飯を渡し終えたが宿まで帰ってくる途中に、が何かを持ち走りながら寄ってきた。

「どうしたの?走ったりして・・・」

「あのっあの・・・っコレ!!」

そう言っての前に差し出されたのは、綺麗にラッピングしてあるケーキ。

「あ、ありがとう・・・」

は嬉しくなって、開けていいかの許可をもらってから開けてみる。もうこの際、○んこみたいなクッキーとかでもいいや・・・。と思いながら。

 

「・・・え、コレが作ったの・・・?」

「うん!味見してないから味に自信はないけど・・・」

レシピ見てないし、というは感心した。やっぱりはすごいんだな・・・。

「あ、食べてみるね?」

「うん!どうぞ!」

備え付けられていたプラスチックのフォークを右手に握り締めて、はケーキをフォークに刺して口に運ぶ。その瞬間を心臓バックンバックンしながら見守る

「・・・うん!すっごいおいしいよ!」

「ほ、ほんとう!?よかった〜・・・!」

の幸せそうな笑顔を見て、は泣きそうになってしまった。好きな人が自分の作ったものを、喜んで食べてくれている。きっと結婚してご飯つくってあげたりしたら、その時もはこんな顔するんだろうな・・・って何考えてるんだろう私!

 

「すごいね、って・・・あ・・・れ・・・・・・?」

「ん?どうしたの?」

「これ・・・なんかすっごいにg」

バターン

ギャアアアアアアアアアア!!!!

が泡を吹いて倒れました。

その日一日、は目を覚ましませんでしたとさ。
原因は未だ、分からないという・・・。

 

「ぜ・・・全然ハッピーバレンタインじゃないよコレ・・・!!」


あとがき
ありがちバレンタインネタ。ハッピーバレンタインデーっていうよりもアンハッピーですねコレじゃ。
ちなみに、バニラエッセンスを舐めたのは私です(爆)
いや絶対いるよね!!世界中に絶対いっぱいいるよね!!こう、アメリカあたりにけっこう

2010.02.14 UP