2人の時間

 

「風邪だな」
「はっほぅ・・・!!久しぶりだよその響き!!」

舌をベーっと出してククールに見せた後、おでこに手を当てられ風邪と宣言されたは、そう言った。

今ここは雪国。オークニスにいるグラッドさんからもらったヌーク草を溶かした湯を飲んだたちは体が暖まったので、早速旅立とうとしているときのことだった。

 

「全く・・・ヌーク草があるからって薄着でいるからだぞ!」
「ふふっ、
ったら熱いーって言ってシャツ一枚だったものね。ここ、雪国なのに」

ゼシカが軽く口を押さえて笑うゼシカに、風邪のせいで顔を真っ赤にしているはへへっと恥ずかしそうに笑った。

 

「ま、今日は旅は一休みしてはゆっくり休んでよ。みんなも最近バタバタしてたから部屋でゆっくり休んでね。風邪うつしちゃだめだから、はごめんだけど一人部屋でお願いするね。あとオークニスの宿はみんな一斉の場所にベッドがあるから、個別に部屋がある宿に行こっか」

淡々と話を続けるにみんなは頷いた。

 

「あ、!」
「えっ?・・・う、うわぁあっ」

に呼ばれ駆け寄ると、いきなりの背中におんぶされた。

「歩くのとか立ってるのしんどいでしょ?宿まではずっとおんぶしといてあげるよ」

にっこりと笑いながらそう言うと、はもう一度はしっかりとおんぶし直した。

「いっ・・・いぃいぃいいっ、よっ!!重いでしょ!?が死ぬ!!
「やだなあ。そんなおんぶで死ぬわけないだろ!ほらちゃんと捕まってないと危ないよ?」

自分の目の前から聞こえてくる大好きな人の声に、は鼓動が激しく鳴りっぱなしだった。

 

 

 

 

「よいしょっ・・・と・・・」

がひとつしかないベッドのある部屋に入り、をベッドの上にそっと降ろした。

「ごめんね・・・重かったよねっ・・・骨折れてない?
「だから
は大げさなんだよ。僕そんなに柔な体じゃないよ?」

それは分かっている。いつも魔物とたくましく戦っている姿を見ていれば、柔な体でないことくらい十分に承知していた。

 

「・・・ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」

顔を真っ赤にしながらを見ると、はにっこりとした笑顔でこちらを見ていた。その視線に心臓が激しくなり、もう口から出てしまいそうな勢いだった。

 

「じゃあ僕、ちょっとお水とか色々用意してくるからね。はゆっくり寝てて?・・・あ、それと」

はいつも寝るときに寝巻きの上に着るカーディガンをに渡した。

「風邪ひいてると寒いだろうから、これ着てて。じゃあ行ってくるね」

そう言っては部屋のドアを閉めて出て行った。

 

 

 

 

「あーあ・・・大変なことになっちゃったなぁ・・・。私のせいで旅が止まっちゃったし」

ため息をついたはベッドの布団をぎゅっと握り締めた。
ふと、自分の今来ているカーディガンが目に入った。

 

「・・・あ、これ・・・の匂いだぁ・・・」

ベッドにごろんと寝転がり、腕の裾あたりを少しだけ嗅いでみると、愛しい人の甘くほんのりした、落ち着く匂いがする。暖かい布団の中で好きな人の存在を近く感じて眠りに落ちるのは、それはもう快楽そのものだった。

は一瞬で深いふかーい眠りに落ちてしまった。

 

 

「どっこいせっと・・・、よーく寝てるなぁー」

ベッドの横にあった椅子には腰掛けた。手には冷たい水の入った洗面器と、それに浸してある薄いピンク色のタオル。はそのタオルを取り出して強くしぼると、何度か畳んでの額に乗せた。

の息遣いは微妙に荒く、顔も火照ってしんどそうだった。

「大丈夫かな・・・。早く楽にさせてあげたいけど・・・そんなすぐには治らないし」

自分が何もできない無力さにため息をついたは、もう一度の顔を見た。

 

この頃忙しくて、あまり仲間との時間を大切にできなかった一行。これを機会にゆっくりとした時間が戻ってこればいいのだが・・・。

が思っていると、がうなり声を上げて寝返りを打った。

「う・・・ん・・・むにゃ・・・、・・・」
「!!!!!!」

自分の名を呼ばれ思わず椅子から立ち上がって後ろへと後ずさったは、息を整えるともう一度椅子に座りこんだ。

 

「・・・・・・」

そっとの頭を撫でてやると、は寝顔のままなのに少しだけ微笑んだ。
その仕草がたまらなく可愛くって、思わず
を抱きしめた。

 

 

 

 

「むにゃ・・・・・・ん・・・、っ?・・・」

未だ寝ぼけた頭で、は目を覚ました。ぼーっとしている中、人の体温を近くに感じて起きたのだ。
体に何だか少しだけ誰かの重心がかかっている。

ゼシカだろうか、なんてぼんやり考えている途中に、だんだん目が冴えてくる。
ぱっちりと目を開けた
が見たのは、自分に抱きつく

 

「あっひゃあああああああああああああ!!何!?何どしたの!?」
「え?あっ、
っ、ごっごめっ」

が叫んだことでが肩をびくつかせて、の体に回した手を急いで離した。

 

「ごっ、ごめん・・・」
「うぅ、ううんっ・・・!全然いいの!むしろうれしい」
「え?」
「あ、ちが、違うの気にしないで!!」

只でさえ元から顔が真っ赤になっていたのに更に赤くし、はひたすら首を振って否定する。
その
の行動には首をかしげる。

「あのっ・・・あたしねっ、ビックリしただけだから・・・嫌とかっ、そんなんじゃないから!」

まだ顔を勢いよく振るに、はくすっと笑う。

 

「僕も・・・いきなりごめんね、その・・・。が可愛いなって思って・・・」

そのの言葉には勢いよくベッドの上で跳ねた。

 

「えっ、ちょ??正気??」
「うん、正気だよ。その・・・さ、僕、・・・
のこと・・・」

ふいにの顔が近いことが分かって、は少しだけ焦る。
2人の真っ赤な顔が近づく。
もゆっくり目を閉じて、さらに顔の距離を縮めようとした、その時だった。

 

ーーー!!りんご持ってきてあげたわよっ!!」
「アッシは千羽鶴折ったでがす!!ま、
千羽どころか5羽もないぐらいでげすけどね
「俺は本買ってきてやったぜ」

3人がどやどやとのお見舞いをしに部屋へと入って来た。
は慌てて無意識のうちに近づいていた顔を遠ざけた。

 

「あら、はもうお見舞いしにきてたのね。邪魔しちゃった?」
「そ、そんなことないわゼシカ!!みんなお見舞いありがとっ」

笑顔でそう言うに、仲間たちも笑った。

 

 

 

「ちょっとこれ、おいしいわよ!!」
「よっしゃああああ!ククールに勝ったでげす!!」
「くっそーヤンガスに負けるなんて一生の不覚だぜ・・・」

ゼシカはケーキをむさぼり、ヤンガスとククールは何やらカードゲームをしている。
そんな仲間たちの姿をみながら、ベッドの上で口を開けて笑う

 

 

 

 

「あ、
「ん?」

そんな3人の姿を近くで見ていたを、は手招きで呼んだ。
に近づくと、に耳を貸すように言った。

2人の行動に仲間たちは気づいていない。

 

「さっきの続きは、またいつかね?」
「っ!」

にそう耳打ちで言われたは顔を火照らせ、驚いた顔でを見た。
も恥ずかしそうに顔を手で覆っていたが、その奥では嬉しそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

次の日。

 

 

 

「おばよー・・・あだじのどいだいわ(おはよー・・・あたしのどいたいわ)」
「おべぼ・・・(俺も・・・)」
「あっじもでげずよ・・・(アッシもでげすよ・・・)」
「・・・ぼぐぼびだい・・・(・・・僕もみたい・・・)」

以外の4人が宿の部屋から出てきた会話の第一声はそれだった。どうやらみんなの風邪をもらってしまったみたいだ。

そんな病原のはというと。

 

「おっはよーーー!!風邪もうすっかり治っちゃった!今日からまた旅・・・って、え?みんな顔色・・・」

あたふたするを見て、みんなはため息をついた。

 

 

 

後日。

風邪をもらいあったり治ってもまたひいたりと、しばらく旅に出れない日が続いたとかそうでないとか。マル。


あとがき
かなりイッチャイチャラーブラーブな読んでて痛い内容になってしまっていてすみません・・・。
まあ可愛いじゃないか!!と受け止めてくださると大変嬉しいですw

2009.04.20 UP