Creamy & Bitter & Spicy
「ーーー!」 珍しい花を道端で見つけたゼシカとは、急いでの名を呼んだ。 だが、のその寝顔は整った顔立ちで、とてもきれいだ。
効果音しかない全くもって理解不能な花の説明をしながらはしゃぎまくるを横目に、 「・・・大丈夫?」
ずっとこんな感じだ。疲れているのもわかるが、もう少しくらい・・・は何か言ってほしかった。 「、仕方ないわよ。だいぶ疲れてるみたいだし、ここは少しそっとしておきましょ?」 の肩を軽く叩いて話すゼシカに、はそう答えた。 夜、一行は宿についた。
───────そして事件は起きたのだった・・・。 「うー・・・。私の好きなものばっかり!エビチリも食べたいしミニハンバーグも・・・あ!コロッケも!
今日の宿での晩ご飯は、バイキング形式だった。 とりあえず1つのお皿に料理を盛り、テーブルに置きに来ると、が椅子に座って眠そうにしていた。 「は食べ物取りにいかないの?取ってきてあげよっか?」 眠そうな顔でそう言うが、笑顔を忘れない。 は2皿目の料理を皿に盛ると、またテーブルに置いた。
「、ドリンク入れて来てあげるよ」 テーブルのイスに座りながら、今にも寝そうな。 「・・・おい。眠いのは分かるけどさ・・・もうちょっと違う言葉も使って話したらどうだ? ククールがそう言うとの体が、一瞬ぴくりと動いた。
いつものなら言いそうにない言葉だ。憎まれ口ばかりのククールだが、さっきの言葉はごもっともである。 「あ?何か言ったか?」
バン、と机を叩いて立ち上がる。
ククールもと同様、机を叩いて立ち上がる。
二人の口論はこんな感じで続く。 彼は何に対してそんなに怒っているのだろう。ククールの言うことに何か怒ることがあったのだろうか・・・。
二人の口喧嘩をとうとう見兼ねたゼシカはゆっくりと静かに立ち上がって、
「いい加減にしなさいよ2人共!そんなに口論したって何も片付かないでしょ!?」
ゼシカがそういうと、2人は水で少し塗れながらもゼシカを向いた。
「、気が立ってるからってククールに当たらないで。 ゼシカが強張った表情で、一気に溜めてた愚痴を吐き捨てた。 「・・・ごめん、みんな。頭冷やして来る・・・。おやすみ」
そう言い残すとは部屋に戻って行ってしまった。 次の日、相変わらず仲直りのないとククール。。お互い顔を背け合い、一言も交わそうとしない。 「なんじゃい、あの2人は。喧嘩でもしたのか?」
「昨日宿で色々あったんですよ・・・」
効果音にプンスカと付きそうなくらい、ゼシカは腕を組んで怒っている。 昨日まで目もまともに開けていなかっただが、今日は目の下クマを作りながらも目はちゃんと開けていた。 「・・・のぅ、」 主君であろうトロデ王が声を掛けても、この返事の仕方だ。
ククールはのことを完全無視だが、他の人に八つ当たりはしていない。 トロデとミーティア、そしてヤンガスとは、そんな3人をハラハラとした気持ちで見つめるしかなかった。 その夜、宿での食事の席にも出ないを無視で、ゼシカとククールは食べ始める。 ヤンガスも相当お腹を空かせていたのか、兄貴分のを待ちながらしばらく我慢していたのだが、食べ始めた。
ぶすっとした表情でククールとゼシカは言った。
「・・・でも私、やっぱり放っておけないもん。ご飯食べなきゃちゃんと体も動かせないし・・・」
そう言うとはゼシカたちの言うことも聞かずに、まだ手のつけていない自分の食事の乗ったトレイを手にすると、 「はあ・・・には何言ってもかなわねえな・・・」 の出て行った方向を見つめて、ククールはため息をついた。
「・・・?」 呼んでも、の返事はなかった。だが、中からものすごい音が聞こえた。慌てているようなそんな感じ。 「入るよ・・・?」
小さく声を出してそう言うと、はトレイから食べ物を落とさないように持ちながら、静かにドアを開けた。 「?」 まだ、目の下にクマを作っている。いつもの優しいの本当の笑顔じゃなかったけど、 「・・・あ、えと・・・ご飯持ってきたの。ただでさえ寝てないと思うから、ちゃんと食べて栄養くらいは摂らなきゃと思って」
そう言ってはどこか申し訳なさそうに、食事をに差し出した。 「・・・ごめん。食欲なくて・・・食べる気がしないから」
が悲しそうな顔をすると、はぎょっとした顔になった。 「ご、ごごごめん!食べる、食べるから!」
そういうとはから食事の乗ったトレイを受け取った。 「おいしい?」
あまり食欲のないは、味を感じることが出来なかった。 「あのさ、さっき部屋入ろうとしたときにものすごい音がしたんだけど・・・何してたの?」
は赤い顔になってブツブツと何か言っている。
「なあに〜?何かエッチなものでも見てたんじゃないの?もそういう年だもんね〜」 ジトーっとした目ではを見つめる。 「・・・ん?」
は微かに、ベッド元にある電気スタンドの台の引き出しが開いていることに気付いた。
「ドゥアーーーー!」
恥ずかしそうに俯いていたは、の奇声に顔を上げた。 「うあああああああああああああ!!!!!!!!!!何で勝手に開けてるの!!!???」 きょとんとした目でを見つめた後、は引き出しの中に視線を移した。 「・・・何、これ?」
はまたゴニョゴニョと下を向く。
「何言ってるか聞こえないよ!これは何ですかー!?」
興味深々に問い続けるに、はとうとう暴露した。 「えっと・・・その、最近寒くなってきたっていうか、が寒そうにしてたから・・・ 恥ずかしそうに打ち明けるに、は心の底から笑った。 「・・・なーんだ・・・それでは寝不足だったわけね・・・」 はあ、とため息をつくと、は謝った。 「じゃあ私のせいでとククールは喧嘩しちゃったわけなんだ。・・・なんか悪いことしちゃったね、私」 今日のは何か弱気だ。言葉の最後を濁らせて下を向いてしまう。 「・・・謝りにいこう?みんなに八つ当たりしちゃったことも。ゼシカとククールのコンビはご立腹だから」
ふかーいため息をつくとは脱力していた。 「私そんな弱気なは嫌いだよ。いつも真っ直ぐ向いてるがいい」 ね、とはニコッと笑った。 「・・・というわけで、さ。のこと許してあげてほしいの」 がそういうと、腕を組んだククールと仁王立ちのゼシカに、は頭を下げた。 「ほんっとうにごめん!これには深い訳があって・・・」
ギロッ、とを睨むククールに、は一瞬たじろいだ。 「えっ・・・と・・・その訳は・・・い、言えないんだけ「言わないと許さないわよ、私」
の言葉に割って入るゼシカは、やっぱり普段の性格と変わらず強気だ。
「そ、その・・・夜中にのためにあ、マフラーを編んでて・・・それで寝不足で・・・」 本当に申し訳なさそうに俯くが2人にそう言うと、ククールとゼシカは目を大きく開いてパチクリとさせた。 「「・・・え?のために?」」 しばらく沈黙が続く。ゼシカとククールの顔はまるでのっぺらぼうかと疑いたくなるくらい、下を向いていて顔が見えない。
「・・・え?あ、あの・・・おふたりさーん」
がそう言うと、ゼシカはいきなりの肩をガシッと掴んだ。 「グッジョブ!!」 驚いた顔をするは、2歩、3歩と一歩ずつ下がる。 「あんたっ・・・女の子のために眠らず慣れない編み物をしてあげるなんて・・・!まるでドラマ!ドラマじゃないの!」
ゼシカは感動といった顔で、の肩から手を離して腕を組んで、何かを考えている。 「、お前も男だな・・・残念ながら負けたぜ。俺は睡眠の時間割いてまで、出来ない編み物なんてしねーぜ」 ククールもまたゼシカと同様に感動した様子で、の顔を見つめる。 「え?え?何?何でそんなに態度が変わるの?」 呆気にとられた顔では3人のやりとりを見ていた。 「もうそんな理由だったならとっとと言ってくれればよかったのに。普通に許すわよ!」 は恐れる思いで2人の前に謝りにきたというのに、何なんだこの変な空気は・・・。
と、いうことで、皆さん仲良く元通りになったのです。
仲間っていう関係は、時々苦かったり、辛かったりするけど・・・
「そういや何でみんな、僕が編み物苦手なの知ってたの?言った覚えないんだけど・・・」
「「そりゃあもう、がそんな家庭的なこと出来るわけないって思ってるから★」」 はこの2人にギガデインでも喰らわせてやろうかというくらい殺意を抱いたのは、この時くらいだった。
あとがき 喧嘩とかするだろーなーと思ってサッと下書きしたら結構よかったので、UPしてみました。 2009.01.17 UP |