勘違いな男の子

、昨日宿屋でテレビ見てたでがすか?それでモンスターバトルロードって番組がやってたんでがすが」
「あー!見た見た!めちゃくちゃおもしろかったよね♪特にあの主催のモリーとかいうおじさん!
風吹いてもないのにスカーフ靡かせてさ!!」
「アッシもあれには爆笑したでがすよ!!」

何やらヤンガスと
の話が意気投合しているようだ。
内容は聞いて(読んで?)の通り、昨日、宿屋の部屋にあるテレビでやっていた番組の話のようだ。

「他に誰か見てなかったのかな?
は?」
「ぼ、僕はお風呂入ってたよ」
「そっか・・・。ゼシカは?」
「あたしもシャワーしてたわ。ていうか同室だったんだから知ってるはずなんじゃないの?」

ゼシカが呆れたように話す。そう、部屋は男女別だったので、
はゼシカと同室だった。
「えへへ。気にしないで」
「気にするわよ!」
「ま・・・まあまあ。ククールは?」
「俺は酒場に行ってたから見てないよ、ハニー」 「なんだそっか。じゃあ見てたのはヤンガスとあたしだけなのか」

ククールの口説き台詞も見事に無視した

ちょっと悲しそうな顔をしながら、ククールは下を向いた。
 
「ま、しょうがないでがすよ。みんな忙しいんでがすよ。あ、ところであのゴールドマンの戦いが・・・」
「えー、やっぱギガンテスとボストロールの戦いだったでしょ!!」

ごっちゃごちゃごっちゃごちゃ、番組の話をひたすら旅中に続ける二人。
当然番組を見ていない残りの
、ククール、ゼシカの三人は、話についていけなかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「アッシちょっと酒場に行ってくるでがすよ!」

ここは宿屋の男子部屋一室。そう言ったヤンガスは、鼻歌を歌いながら外に出て行った。
やたら上機嫌なようである。
 
「・・・
「ん?何ククール」
「お前今日、
とヤンガスの会話についていけなくておどおどしてたな」
「ぶっ!?ななななななっ・・・何をっ・・・・・・」
 
が飲んでいたコーヒーを口からぶっ放し、おどおどしながらククールに顔を向ける。

「バレバレだったっての。何、二人が仲良いと心配か?」 「・・・そりゃ・・・ちょっとは・・・」

やっぱりな、とククールは少しうなずく。

「俺さ、あの番組が酒場でやってたからちょっと見てたんだけど」
「えっ!?そうなの!?」
「まあな。でも何にもおもしろいと思わなかった。…ていうかむしろつまらなかったぜ・・・。」
「へ・・・へぇ・・・」

ククールが話すのも嫌そうに、番組の話を続ける。
 
「俺だけかと思ったけど、隣りにいたバニーちゃんも え〜っっ何コレつまんないっ★ て言ってたからさ。
周り見渡したけど笑ってるのはおっさんばっかだったぜ」
「うん、情報提供うれしいんだけど途中のバニーちゃんのものまねが気色悪かったよククールくん」

が突っ込んだ。
 
 
「つまりだな・・・。の感性は・・・その・・・おっさんなんじゃないか?」
「やめてっ!僕もそう思ってたけど思い出したくないんだ!」
がすかさず耳を塞ぐ。
ていうか、男どもにそんなこと思われてるって一体・・・。
 
「でもなんかさ・・・胸の中でイライラするっていうか・・・嫌っていうか・・・こう今までに感じたことなくて・・・!
またそれが自分に対して腹たっちゃってさ!!」
「ふーん・・・。
知ってるか?そういうの、焼きもちって言うんだぜ」
「やきもち・・・?」
 
感じたことのない気持ち。それに対して、わけがわからず自分に怒る
「だからお前はが好きで、仲の良いヤンガスに嫉妬してんだよ。
お前はいつも
といたから、失うのが怖いんだろ?」
「・・・・・・・・・」
 
図星だった。がいなくなるのは嫌だ。
ずっと、自分のそばで笑っていてほしい。そう心の中で、
はきっと強く願っていたのだと思う。
 
「・・・うん・・・・・・」
「な?」
ぽん、と頭を叩くククールに、はさっきよりも、胸の中の怒りが少しだけ和らいだ気がした。
 
 
 
 
「ね、ちょっと入ってもいーい?」
女性独特の高い声とともに、部屋のドアをノックする音が聞こえる。
 
「?どうぞ」

声の主が部屋の中に入ってきた。ゼシカだった。

「ゼシカか。どうした?」
「ん・・・。ちょっと
が出かけちゃってさ。暇だから来てみたの・・・ってあれ?ヤンガスは?」
「あ!!!!」
 
ヤンガスがいないことを、は思い出す。そしてもいない。
とククールは少し、嫌な予感がした。
 
「ゼシカッ!、どこに行くって!?」
「え?酒場って言ってたけど・・・どうかしたの?」

「酒場・・・か。やばいかもしんねぇぜ?」
 
酒場に行くと言ったヤンガスと。最近二人の仲は良好。もしかしたら・・・もしかしたらだが!何かあるかもしれない。
にだって人を見る目くらいあるだろうが、優しい子だから、迫られたら断れないかもしれない。
第一に相手の気持ちを考えるだろう。
 
「何かあったの?それでヤンガスは?」
「ヤンガスも酒場なんだ!もしかしたらだが・・・なんかやばいかもしんねぇ!」
「ええ!?」

ゼシカの驚いた声が部屋に広がる。と同時に、三人の体は宿の外へと走っていた。
酒場に着くと、酒の匂いが外にまで漂って鼻につく。
中に入ると、カウンターのそばで
とヤンガスが並んで座っていた。
 
「まあ待て待てはやまるな。ちょっと様子を見てみようぜ」

とククールに言われ、口を塞がれずるずると引きずられる
だ。
仕方がなく、ククールのアドバイスに、従う
。しばらく様子を伺うことにした。
 
 
「っぷー!!またモリーでがす」
「ほんと不思議だよねー・・・風風吹いてないのに」
「お!昨日のゴールドマンの戦いの続きでがすな」
「えー!なんでー!?ボストロールとギガンテスのは!?」
 

とヤンガスは、酒場に置いてあるテレビに向かって、二人で会話している。


「な・・・何なのよアレ・・・」
「何の会話?」
「・・・おそらくだが・・・あのテレビの会話だ」

ぱっとテレビを見ると、今日
たちが話していたあの番組がやっているようだ。
 
「な・・・なあんだ!!ただ会話してただけかあ!もう!心配したじゃないか」
「「おお!?」」

以外の二人、つまりはククールとゼシカが声をあげた。
男のククールはともかく、女のゼシカが「おお!?」と叫ぶのはどうかと思うが・・・。
 
「なに?二人とも驚いた声だして」
!?分からないの!?」
「え?」
 
 
ゼシカが慌てた様子で、とヤンガスのいる方向を指差した。
が見ると、・・・そこには!!!
とヤンガスが今にもキスしようとしている瞬間だった!
 
 
 
 
「ぎゃっぎゃーーー!!!ヤンガス!」
「「へ?」」
 

が絶叫の声で二人の背後に立ち名前を呼ぶと、とぼけた表情で振り向いた。

「へ?じゃないよ!!!何キスしようとしてるわけ!?だいたい二人で一緒に酒場なんか来たりして!!」
「・・・へ?キス?あたしが?ヤンガスと?」

が腕をぶんぶん振り回して主張した言葉に、は疑問符を浮かべまくった。
 
「・・・ああそっかそういうことか!、勘違いしてるよ」
「・・・え?」

「ただ単に、酒場に言って二人で番組見ようって話してただけ。
旅の仲間なんだから、そんなやましい関係あるわけないじゃない?」

「え・・・でも・・・キス・・・」

「それはヤンガスが体を前に乗り出してたんだよ。その状態であたしの方に向かって話してたの。
見る方向によっちゃそりゃ…キスしてるように見えたのかもしれないけど…ましてやヤンガスだよ?
私だってそこまでアホじゃないよ」

、今アッシちょっと傷ついたでがすよ」
 
ヤンガスの顔がショックを受けているようにも見えた。
 
「なん・・・なんだなんだそっかあ!!だよね・・・!ごめん、なんか早とちりしちゃって」

が嬉しそうにヘラヘラ笑った。
 
「?なんかわかんないけどよかったねぇ


もつられて笑う。

「ま、アッシは兄貴が惚れてる女には手は出さないでがすよ」
「「惚っ・・・!?」」

二人・・・
が顔を真っ赤にして、下をうつむいた。
 
「あーなんかもう初々しいわねこの二人!」
「見ててムカつくぜ」
「〜〜〜っ!ヤンガス!言っちゃダメだろ!?」
「でも本当のことでがすよ♪」
 
ヤンガスとは、なんか追いかけっこしてる。
 
「うふふ、良かったわね
「な・・・何言ってんのよゼシカ!」


相変わらず顔が真っ赤な
 
5人の微笑ましい光景は、とてもじゃないけどバックが酒場・・・というのは、似合わなかった。

あとがき
短編だい3かいめ。最近、アイデアがぽんぽん浮かびます。本編を書け!笑

今回はヤンガスとヒロインをいちゃつかせてみた。それに主が嫉妬・・・!
いやーすみません。ヤンガス嫌いな人←
キスなんてするわけないわ!とか言わないでくださいね;

2008.08.15  UP